最近は怒りのコントロール技法なども考案され、

ちょっと激しい口調を使いますと「パワハラ」「モラハラ」などと非難され、

「怒る事」イコール「悪いもの」という捉え方が確立されつつあります。

ですが本当にそうでしょうか？

考えてみましょう。



基本、怒る事は望ましい事ではありません。

何があっても穏やかに諭し、円満に事を進めていくのは、間違いなく美徳です。

素晴らしい事です。

怒りをコントロールする技法が確立された事も、実に望ましい事です。

また、ものを教える時にも、怒らないという事は、真面目に教わろうとする相手の知識技能の習得をスムーズにします。



ですが、こんな事を考えてみましょう。

教わる側の態度が不真面目。

こんな時に厳しく怒らなかったら、相手の態度を変える事はできません。

何度注意しても子供が、自分や他人にとって害になる行為をやめない。

怒らなければ、いずれ誰かが傷つきます。

怒りをコントロールする技法で、怒りを抑えた。

その怒り、

実は無くなっていません。

無意識下にどんどん溜まっていきます。

溜まった怒りはあなたの心身の健康に悪い影響を与えます。

そして、

ここが一番肝要なのですが、

何をされても怒らなかったら、

ずるい人があなたをいじめます。

不当に扱います。



なぜ怒りという望ましく無い感情が人間に備わっているのでしょうか。

結論を急ぎますが、

それは自分を自分で守るためだと私は考えています。

自分で自分を守ることは、自立した人間になるためには必要不可欠です。

世の中にはいい人も多いですが、ずるい人、意地悪な人もたくさんいます。

そんな中にあって、何をされても怒らなければ、

それは「あ、この人はいじめて大丈夫だ」というサインを、ずるい人間に与えてしまいます。

そうなったらあなたは職場や学校でいじめられる役割を担わされてしまいます。

その場合、基本的に一番大切なのは、先程の通り、自分で自分の身を守る事になります。

その時に大切なのが怒りの感情です。

怒りはあなたに勇気と武器を与えます。

怒りを向けるべき相手に正しく向ける事は、極めて大切な事です。

ですが多くの場合、

怒らない人は、本来向けるべき相手に怒りを向けず、自分の味方である自分の心許せる親しい人に、八つ当たりとして怒りを向ける事が多いです。

これでは意地悪な人からはいじめられ続け、親しい人はあなたから去っていきます。

そうなると極めて悲惨な人間関係しか残りません。

怒るべき相手に、怒るべき内容で、正しく怒りを向ける事は、極めて大切な事です。



また、子供が悪い事、危険な事をしているのに怒らないのは、ネグレクトです。

子供を守る為には、時には怒る事も必要です。

こうして考えを進めていきますと、

怒りはなんでもかんでも「悪」ではなく、必要な「怒り」というものもあるのが見えてきます。

ですが、誤解を招くといけませんので、やはり望ましく無い怒りについても、最後に付記させていただきます。

望ましくない怒りとは、

単に自分のイライラやストレスを相手にぶつける事です。

例えば、

子供に勉強を教える場合、

どんな子供にも能力差、個人差、得意不得意があります。

その時、他の子供にうまくいった方法や、指導時間で、その子を教えても、その子にはうまくいかない事は実に多くあります。

そんな時に「なんで分からないんだ」と怒るのは悪い怒りです。

かえって子供の理解力を低下させ、子供を勉強から遠ざけさせてしまいます。

その子以外のことを基準にして怒るのはやめましょう。

そして、自分が今何かうまくいかなくてイライラしていたり、不満が募っている時に、自分の感情の吐口として、相手に怒るのは絶対にやめましょう。

相手は心のある人間です。

相手を大切にしない怒りは厳に慎むべきです。

そうした時は、怒りのコントロール技法を大いに駆使して怒りを鎮め、相手ではなく自分の心をしっかりと見つめましょう。



最後にまとめてみますと

怒りは全てが悪いわけではありません。

自分を守る。

愛する人を守る。

ここから発する怒りは、封じ込めてはいけません。

向けるべき相手に、正しく怒りを向けましょう。

怒りは自分と愛する人を守る為にあります。