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逆境受験を突破した鋼鉄の意地

2018年05月21日 10:16  カテゴリ:子育てカテゴリ:勉強カテゴリ:

逆境受験を突破した鋼鉄の意地



少し思い立ちまして今回は創業当時の思い出話をさせていただきます。いつにも増して長文ブログになりますが、どうぞお付き合いください。

主人公はかつての塾生です。名前はA君としておきます。

思い出深くない塾生は一人もおりませんが、今日は彼を取り上げます。大人しそうな外見からは想像もつかない鋼鉄の意地を持った男でした。

入塾説明会参加者0名


私たちの塾は創業当初、入塾説明会参加者0名から始まりました。

今考えると当たり前です。

無名の個人塾に入ろうなどという酔狂な受験生などいるはずがありません。

「独立開業はやめてどこかにまた勤めようか」と真剣に悩みました。

しかし独立前に勤めていた塾で教えて来たK君が、たった一人、私たちの塾の戸を叩いてくれました。K君は不登校でしたが、「仲川先生でなければいやです」と言って前の塾を辞めてまで来てくれました。

私は「たった一人でも、そこまでして来てくれた生徒がいるならやる」。そう決意して塾をスタートさせました。

ところがそうこうするうち、私が独立開業したという噂を聞きつけたかつての教え子達が、一人また一人と私たちの塾に入塾してきてくれ、その数はたちまちに20人を超えました。

その数もさることながら、私が心底意外だったのは、前の塾を辞めてまで来てくれたのは、私が可愛がっていた生徒ではなく、私にしょっちゅう怒鳴り飛ばされていた生徒達だった事です。

その子らの将来を考えて真剣に接していた姿勢は伝わっていたのだなあと、本当に嬉しく思いました。

お前に高校は無理と学校から言われていたやんちゃ少年に、勉強はイマイチのスポーツ野郎、大変賑やかな塾になりました。

A君の入塾


A君も以前の塾での生徒の一人でした。A君は受験生なのに前の塾もやめた上、学校でも上手くいっておらず、悪い噂ばかり聞いていたので密かに心を痛めておりました。

ですが夏休み直前、改心したのでしょう、「先生と頑張らせてください。僕をB高校へ入れてください」と、私たちのもとへ来てくれました。

B高校は進学校です。そしてA君の成績は下がりきっていました。あまりに無謀な挑戦です。

しかし「無理だからやめた方が良い。志望校を下げよう」などと言えば、せっかくA君が立ち直ろうとしている気持ちそのものを潰してしまうことになります。

それだけは死んでも嫌だったのと、A君は芯の強い男です。無謀な挑戦でも、努力の総量がそれに見合ったものであれば、無謀はいつしか無謀では無くなります。

私はそこにかけてみようと思いました。

「俺と一緒にB高校を目指そう」

私たちはA君を受け入れました。

それでも僕はB高校を受ける


A君は遅まきながら受験勉強を始めました。学校や周囲からいくら「無理だ」と言われても、耳を貸さず、黙々と努力を続けました。

以前のブログにも書きましたが、私自身の受験の時とほぼ同じ状況です。それがどれほどつらいものか、身をもって私には分かります。A君の指導にも熱が入りました。

A君の成績は本当に上がったものの、一学期の不振が響いて、ついに三学期の確定内申点は、B高校のボーダーを大きく下回ってしまいました。

学校からも志望校変更を強く求められました。

しかしそれでもA君は言いました。

「僕はB高校へ入りたい。B高校を受けます」と。

私は素晴らしい生徒に出会えたと、心底嬉しくなりました。鋼鉄の意地を持った生徒には、そう何度も出会えるものではありません。

私はお母さんにその旨をよく話し、A君の気持ちも伝え、学校の最後の三者面談の場でB高校受験で押し切ってもらうようお願いしました。

大誤算


私はA君の確定内申から、当日点を何点取れば逆転合格できるか計算して目標点を割り出し、そこへ向けてA君の指導を続けました。

A君の努力の甲斐あって、何とか当日間際には、目標点数が取れそうな見通しが立ってきました。

私もA君も心が沸き立ちました。

しかし、当日試験終了後、自己採点を終えたA君から電話がかかってきました。

「先生、目標点、取れませんでした。あんなに一生懸命教えてくれたのに、ごめんなさい」

最後の最後に最後まで


私は絶句しました。あんなに頑張っていたのに。あんなに入りたがっていたのに。

「残念だったな」とはどうしてもいう気になれませんでした。「まあ何がどうなるか分からんので、合格発表までは希望を持とう」などという無責任な事を言うのも、死んでも嫌でした。

せっかく俺を頼って来てくれたのに。ひたすら努力した男なのに。

私はまだ出来ることを必死に考えました。

ある!

打てる手はまだある!

明日まだ面接があるじゃないか。

一般受験では面接は合否にほとんど関係しないと言われますが、合否に全く関係がないのなら面接試験などするはずが無い。

学業不振への反省を素直に伝え、挽回するためにどれほど頑張ったか、そして入学後に頑張りたい意思と、何よりも、どれほどB高校に入りたかったか、

それらを面接官に余すところなく伝え、これからお世話になる高校の先生達に「こいつを教えてみたい」と思わせれば、まだ合格の可能性は残るのではないか。

そう考えた私は、A君の母親にその旨を話しA君を自宅に呼んで面接の特訓を開始しました。

「明日は面接試験の当日だが、もうそんな事は言っとれん。徹夜になるが覚悟しろ」

そう言い放った私に、A君は力強く頷きました。

特訓を終え、A君を、身支度をさせるために自宅に送って行く頃には、もう夜が明けていました。A君は文字通り徹夜で面接に挑む事になりました。

合格発表当日


嬉しい知らせが、私のもとに続々と寄せられてきました。高校は無理と言われたやんちゃ坊主も、不登校を乗り越えたK君も、みんな受かりました。

しかしA君からはまだでした。

A君に電話するのに、正直抵抗が大きかったです。

しかし確認しないわけにはいきません。

A君に電話しました。何故かお母さんが出ました。

A君は受かっていました。泣けて上手く電話できなかったそうです。

この時ほど、俺は間違ってなかった、独立して良かったと思えた瞬間はありませんでした。

ただ、同じ日の夜、かわいそうに、どこにも相談する所がなかったのでしょう。前の塾の生徒から「先生、高校ダメでした。これからどうしたらいいんですか」という電話が数本入ったのは、何より悲しいことでした。

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